【N&A Art SITE】向山喜章 個展「marsmoonveeda・8」開催決定(11/30-12/16)
N&A Art SITEでは、向山喜章の個展『marsmoonveeda・8』(マースムーンヴィーダ・ハチ)を11月30日(木)から12月16日(土)まで開催いたします。
■開催概要
展覧会名: 向山喜章 marsmoonveeda・8
会期: 2023年11月30日(木)―12月16日(土) 12:00-17:00 (日) (月)休
会場: N&A Art SITE(東京都目黒区上目黒1-11-6 / 東急東横線中目黒駅より徒歩5分)
主催: Yutaka Kikutake Gallery
協力: エヌ・アンド・エー株式会社
※展示作品は全て販売いたします
※作品のご購入は会場でのお申込制です(メール等でのお申込は頂けません)
向山は、代名詞ともいえるワックスを用いた作品を経て、近年では繊細な色彩のコントロールが特徴的なキャンバス作品に取り組むなど、表現領域を多彩に展開してきました。京都の元離宮二条城、神奈川県の浄楽寺など、日本の伝統的な空間建築での作品展示が高い評価を得る一方で、2018 年から 2019 年にかけては、MGM リゾーツ・インターナショナルの招聘により、ラスベガスにて半年間の滞在制作を行うなど、国際的な活動においても知られています。本展では、月のルーツとなる2001年制作のワックス作品“Maruyulate”2点を中心に、本展に向けて新たに制作されたワックス作品、キャンバス、ドローイング約24点を展示いたします。
■作家ステートメント
「月尊き」
眼差しが潤んだ晩夏 見上げた満月は楕円となった
月光は久しく有難く ひとの世を優しく照らす
「月」を詠んだ日本悠久の平安時代の典雅な文化と神仏を敬い
畏怖の念と共に祈る姿に光も宿る
『密教的宇宙観』への果てないイメージは 円や楕円のように
上下左右の少ない丸き心も育まれるようである
今回 8 点の新作キャンバスと 8 点の新作ドローイング及び
新たな伝統色を纏ったワックス作品により N&A の空間に 24 点程のひかりの浮遊を試みる
新しい芸術は 古(いにしえ)の文化ののちに立つと思われるが
制作の長き継続は 作家の技術や情熱などでは生まれ得ない
『時空を超えた 八方(はっぽう)すべてへの感謝の礼』こそ
一条の参詣路であり 美は峠夜道の際(きわ)にある
暗闇深きほど月明かり 尊きものと
向山喜章
■向山喜章について
1968 年大阪府生まれ、現在は東京を拠点に活動している。
向山は幼少期を日本有数の密教の伽藍が立ち並ぶ高野山で過ごし、周囲の静謐な環境やそこに存在する密教美術に触れてきた。その原体験は、向山が初期より一貫してモチーフとして扱ってきた光という根源的な存在態へと繋がっていく。代表作ともいえるワックスを用いた作品では、光に姿を与え固定化するような試みを続けてきた。様々な色相がワックスとともに固定化された作品は不可視の領域を可視化させ、美という概念そのものを問いにかけるようで、高い評価を得ている。近年では繊細にコントロールされた色彩を素材として扱い、数十回に渡って塗り重ねられ制作されるキャンバス作品を発表しており、幾様にもその姿を変えながら、歴史、光、人の精神といったキーワードとともにその表現領域を拡大している。主なパブリックコレクションとして、森美術館(東京)、横浜美術館、軽井沢現代美術館、その他のコーポレートコレクションとして、株式会社大林組、日本サムソン株式会社、株式会社ポンテヴェッキオホッタ、株式会社カザッポアンドアソシエイツ、株式会社キルトプランニングオフィス、MGM リゾーツ・インターナショナル、東京俱楽部などが挙げられる。
■展覧会に寄せて 南條史生 (エヌ・アンド・エー株式会社 代表取締役)
N&A Art SITEではこのほど、旧知の作家である向山喜章の新作個展を開催する。
向山喜章と私とはこれまで幾多の交流があった。作品の主題は、いつも光である、と総称してもおかしくはない。30年前、彼の出発点には、厚く積み重ねられた蜜蝋があった。この蜜蝋は、濃厚な匂いを発し、物質としての存在感を示しつつも半透明で光を湛え、季節の変化や時の移ろいに応じてかそけき表情の変化を見せた。その後素材や技法は変転を見せ、色彩も多様にひろがり、より軽く、より鮮やかな方向へと向かった。
しかし彼の作品が変化しても、その背後にある深い精神性と洞察を見誤ってはいけない。というのも彼はその出自からして高野山と関わりを持ち、真言密教と深い因縁を秘めているからだ。彼の作品のモチーフはほとんどが正方形か円形である。これは現代美術から見るとミニマリズム的な還元主義の結果のように見えるが,一方から見ると曼荼羅のモチーフにも見える。密教思想において宇宙とは森羅万象であり、メタバースを持ち出さなくても世界は最初から幾重にも重なる平行世界の入れ子状である。象徴的シンボリズムが単純な形態によって表すものは、見えるもの以上に深く、根源的だ。
本展のタイトル「marsmoonveeda(マースムーンヴィーダ)」は、密教的宇宙観を表す作家の造語である。そしてその中に「ムーン(月)」という言葉が含まれていることからもわかるとおり、この展覧会では月が重要な存在を示している。そのせいか、なるほど作品は多くが丸い。一方でそれを取り囲む宇宙を表す曼荼羅としての正方形も多い。作品の中には数点楕円が含まれている。楕円について作家の「月尊き」というステートメントの中で語っている。「眼差しが潤んだ晩夏 見上げた満月は楕円となった」。月の円が楕円になるとき、空海の世界が光で満たされ、その瞬間に月は姿を楕円に変えるのかもしれない。私が高野山で聞いた秘伝「月輪観瞑想(がちりんかんめいそう)」もまた月に繋がる悟りである。蔵前のユニークなギャラリー「空蓮房」で展示された彼の円は、白の中の薄紫の円盤が、宇宙に浮遊する有様を示した。また葉山の浄楽寺での展示は、御仏の姿と相まって、極限の円相が、時を超える悟りを体現した。
本展ではワックスの作品に加えキャンバス、ドローイングの作品など、全24点を紹介する。この展覧会が向山の新たな境地と深い精神性を、清らかな色彩と淡い光に托して形象化していることを是非鑑賞していただきたい。
南條史生
【展示についてのお問い合わせ】
N&A Art SITE(エヌ・アンド・エー株式会社)
担当:竹ヶ鼻、永倉
artsite@nanjo.com 03-6261-6098
展示風景撮影:坂本 理